島の密度

表面にやってきた原子はある頻度でランダムに表面を拡散し,
他の原子と出会うと島を形成する.



図 1. 拡散障壁の模式図.

拡散頻度はアレニウス型の式 ν = ν0exp(-Ed/kBT) であらわされる.
ここでEdは図1に示す拡散障壁, ν0は頻度因子, kBはボルツマン因子, Tは温度である.

拡散頻度は島の密度の温度依存性から求めることができる.
図2はIr(111)上に成長したAu島のSTM像を示している.
基板温度を下げるにつれて島の密度があがっていることがわかる.



図 2. Ir(111)表面に成長したAu島のSTM像.基板温度 (A) 300 K, (B) 160 K, and (C) 80 K.
図のサイズ (A) 1000×1000 nm2, (B) 200×200 nm2, and (C) 100×100 nm2 (inset 15×15 nm2).

平均場の核形成理論[1]によると, 島の密度nは
n = η(4F/ν)i/(i+2)exp(Ei/(i+2)kBT),
と表される.ここでηは数値パラメータ, Fは蒸着速度, iは臨界島サイズ,
Eiはi個の原子からなる島の結合エネルギーである(E1 = 0).

図3はln nを1/Tに対して示した図(アレニウスプロット)である.



図 3. Ir(111)上におけるAu島密度のアレニウスプロット.

66〜160 K(i = 1)における直線の傾きと切片から
Ed = 0.094 ± 0.007 eV and ν0 = 2.8×109±1.3 s-1と見積もった[2].


References

[1] J. A. Venables, Philos. Mag. 27, 697 (1973).
[2] S. Ogura et al., J. Phys. Conf. Ser. 100, 072003 (2008).